カーボン製のセパレーター
ガスが通る溝が加工してある。
イオン交換膜に触媒、電極を付けたMEA
燃料電池の原理は、水の電気分解の逆の反応とよく言われるが、構造は相
当異なる。固体高分子型燃料電池(PEFC)の構造を説明しよう
真ん中にはプ□トン(H+)を水素極から空気極(または酸素極〕へ移動
させるための50μm程度のフィルム状イオン交換膜がある。この膜が電解質
で、リン酸を使ったものはリン酸型燃料電池と呼ぶ。この膜の両側には触媒
層が付いている。水素極には白金、白金・ルテニウム触媒が、一方の空気極
には白金触媒が使われている。ただし、実際はこれだけではなく、ほかの成分
は企業秘密。そして、触媒はカーボン粉末に何個もくっ付いた状態で存在する。
さらに、イオン交換膜と同じポリマーがバインダーポリマーとして触媒
とカーボンを覆っている、役目はプロトンを触媒にしっかりと接触させるた
めである。その両側には集電体があり、これまでのものを1つにしたのが膜・
電極接合体(MEA)と呼ばれるもので、まさに燃料電池の心臓部的パーツ。
そして一番外側に溝のあるセパレーターがあり、MEAとセパレーターの
間を水素あるいは酸素が通る。これらすべてを1つにしたのがセル。このセ
ルを何十、何百枚も直列につないだのがスタック。セル1枚で約0.7Vの
電位差が得られるので、セルを300枚重ねると210Vの電圧が得られる。
自動車のモーターを回したり、家庭で使うにはインバーターで直流を交流に
変換する必要がある。では、燃料電池の中ではどのような
化学反応が起こっているのか。燃料の水素ガス(H2)が送られてき
て水素極の触媒と反応すると電子が飛び出しH+となる
このプロトンが膜の中を通り抜けて反対側の空気極に向かう。空気極では、
送られてきた空気中の酸素が触媒のカでH+と仕事を終えて戻ってきたe-と
反応して水になる。一連の作動温度は80〜90℃で行われる。
反応により、空気極側には水がどんどん生成されるので排水しないと、水
が触媒を覆って酸素と接触できなくなってしまう。しかし、ここでちょっと
厄介なのはPEFCではイオン伝導物質が水のため、イオン交換膜は水がな
いと働かない。乾燥させてはいけないのだ。そのため、水素極では水素ガス
を加湿した状態で供給している。適切な水分管理が重要なのだ。水はそのま
ま水蒸気として大気に捨ててもいいが、空気や水素方スの加湿に使ったり、天
然ガス、メタノールを燃料に使った場台の改質用に再利用する。
ここで改質という言葉が出てきたので説明しよう。燃料には水素を使うが、
現在インフラ面で純水素を供給できる体制にはない。そこで、天然ガス(主
成分メタンCH4)、メタノール、ガソリン、プロパン、ブタンといった、
水素を含んだものを燃料に使う。
これらの燃料に高温下で水や酸素を混ぜて水素を取り出すのが改質。純水素
を使う場台に出てくるのは水だけだが,改質燃料の場台、CO2、NOX、CO、
HCが少ない畳だが発生する。COは触媒と相性がよく吸着して水素を阻害
する。すると、H2はH+になれず性能を落としてしまう。これをCO被毒と
言う。そのため、改質では燃料中のCO濃度を10PPm程度に抑える必要が
有り、ここが各社腕の見せ所なのである。
燃料電池の性能を計る目安は、スタック重量(s)当たりどれくらいの出
力(kW)が出るか、また容積(L)当たり何kWの出力が出るかだ。目標
数値は「1以上。現在最先端を進んでいるとみられるカナダのバラード・パワ
ー・システムズが昨年秋に公表した(Mark900)スタックの出力密度
は、1.31kw/L(純水素)、1.23kw/L(メタノール改質)。
モジュールでも同1.04、同O.97。
スタック容積は61Lで、空気加湿器、マニホールド、センサーなど加えたモジュール容積は77L
出力は純水素で80kW、メタノール改質で75kW。
また、燃料電池のエネルギー効率はセル電圧に大きく依存する。システム
的には、燃料利用率をどこまで上げて
熱的バランスを取れるか、またコンプレッサーの補機動力をどこまで下げら
れるかがポイントになる。さらにインバーター効率も効いてくる。なお、燃
料を送る際に高圧にすると、同じセル電圧でも多くの電流がとれるので,出
力を高めることができる。しかし、空気コンプレッサーの動力が必要になってくる。
注意:一部記号の表記が分かりにくい表現になっています、ご了承ください。
リン酸型 (PAFC) |
溶融炭酸塩型 (MCFC) |
固体電解型 (SOFC) |
固体高分子型 (PEFC) |
|
電解型 | リン酸水溶液 | リチウム・ナトリウム系炭酸塩 リチウム・カリウム系炭酸塩 |
ジルコニア系 セラミックス |
高分子膜 |
作動温度 | 200℃ | 650℃〜700℃ | 900℃〜1000℃ | 70℃〜90℃ |
燃料 | 天然ガス(改質) メタノール(改質) |
天然ガス(改質) 石炭ガス化ガス |
天然ガス(改質) 石炭ガス化ガス |
天然ガス(改質) 水素 メタノール(改質) |
発電効率 (HHV) |
35%〜42%程度 | 45%〜60% | 45%〜65% | 改質ガスを用いた場合 30%〜40% |
特徴 | ほぼ商用化段階 | 高発電効率 内部改質が可能 |
高発電効率 内部改質が可能 |
低温で作動 高エネルギー密度 移動用電源および 小容量電源に適している |
日本の 主な開発メーカー |
東芝 富士電機 三菱電機 |
IHI 日立製作所 三菱電機 |
三菱重工 富士電機 TOTO |
東芝 三菱電機 三洋電機 トヨタ 松下電器 三菱重工 富士電機 |
参考写真
米ロスアラモス国立研究所、米モトローラが試作した、超小型ダイレクトメタノール燃料電池(DMFC)
寸法 3.8cm×3.8cm×3.2cm、中には2つの燃料電池と燃料のリザーバーが入っている
通常の蓄電池の10倍のエネルギー密度があり、携帯電話なら一ヶ月以上、パソコンなら20時間使用可能
3〜5年以内に生産に入るという。
燃料電池スタック(約50セル)
金メッキセパレータは、アイシン精機が研究開発している。
参考引用書:日刊工業新聞社 TRIGGER
雑誌 トリガー の出版元 日刊工業新聞社
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